こころのカフェテリア
デグーは蛇が嫌いで、南米音楽が好き Vol.6
今度は、同じ実験箱にセンサーとスピーカーを取り付けます。デグーがある場所に行くとセンサーが作動してチリの民族音楽が流されます。別の場所に行くと西洋音楽が流されます。すると、デグーはチリ音楽が流れる場所に長く滞在することがわかりました(右)。しかし、バッハの曲とはストラヴィンスキーの曲の選択では、特にどちらの方に長くいるということはありませんでした(左)。生物が棲む環境は音響的な特性を持っています。さらに伝わりやすい音の種類、風の音、雨の音、鳥や虫の声など様々な音源もあります。民族音楽はそういったものの影響を受けてできています。動物たちの音楽の選好もまたそのような環境の影響を受けていると考えられます。
私たちには様々な好き嫌いがあります。その中には生まれてから学習するものや文化的なものもありますが、進化の過程で形成されたものもあると考えられます。実験で使ったデグーは実験室生まれなので、ヘビを見たこともなければ、チリの自然環境も知りません。好みは生まれつきと考えられます。さて、私たちがヘビを怖がったり、音楽の好みがあるのはなぜでしょう?
文献
Watanabe,S., Braun,K., Mensch,M., & Scheich,H. 2018 Music preference in degus(Octagon degus): Analysis with Chilean folk music. Animal Behavior and Cognition.5,201-208.
Watanabe,S., Braun,K., Scheich,H. & Shinozuka,K. 2021 Visual snake aversion in Octodon degus and C57BL/6 mice. Animal Cognition
https://doi.org/10.1007/s10071-021-01527-y
(文:渡辺茂 慶應義塾大学 名誉教授)