こころのカフェテリア3

こころのカフェテリア Vol.3

あなたは あなただから いいんだよ!

はじめに

 私には、発達障害の特性があります。そのため幼少期から集団生活になじめなく不甲斐ない気持ちに陥ることが多くありました。いつの日か気が付けば「いつ死のう」「どうやって死のう」などと考える日々を過ごすようになっていました。
 今の社会、障害の有無にかかわらず自死を考える傾向が増しています。名門大学出身であっても、トップアスリートであってもそれは変わらないようです。そうです、いくら地位や名誉や財産を得ても人間には、自死を考えてしまうことはあり得て、それは、極めて自然なことなのかも知れません。

心の苦しさ

 心が苦しいと感じることは、悪いことばかりではありません。心が苦しいと感じるのは、願いと今の状態が異なっていることが考えられます。つまり願いや希望を抱けている表れで、より良く生きようとしていることを示しているのです。
 義務教育に長らくかかわっていますが、以前は学力を高める過程で「自信」「意欲」「向上心」「自制心」などが高められました。しかし、いつの日か学力を上げることと「非認知能」と呼ばれる人間力を高めることが乖離し始めました。
 その要因としては、他人との比較で評価され、一度の失敗でも許されない風潮が関係している気がします。それにより、学力と共に伸ばせるはずの「自信」「意欲」「向上心」「自制心」などの「非認知能」を培う機会を逸したのでしょう。

 *非認知能とは、自信、意欲、忍耐力、自制心、精神力、自己理解力、社会性、創造性などを意図しています。

SDGs

 「持続可能な開発目標」という言葉が、広く知られるようになりました。これは、人に対しても意識する必要があると思います。「何歳だったら、このくらいできて当たり前!」「社会人なら当然!」このような価値観で評価し続けられ際限なく求められれば、人の心は折れてしまうでしょう。
 人間であっても、いや、人間だからこそ!持続可能な目標設定を心掛ける必要があると考えています。そのためには、他人との比較ではなく、過去の自分との変容に目を向けてみると良いと思います。また仮に変容に至らなくても、後退と感じられる変容であっても、トライしてみた事実やチャレンジできた自分を評価できたならと思っています。
 もし、生きづらさを感じたら、それを伝えていくことでより成熟した社会に近づけると思います。生きづらさを発信してもらえる存在は、人間が持続するためには重要な存在だと考えています。

地球のバトン走者

 心が苦しくなると私は、意識して次のように考えるようにしています。一人一人の存在は、人類だけでなく地球という生命体のバトン走者。子孫を残すとかの話ではなく、多様性を認め誰もが取り残されない社会の実現の創造者・構成員。そう考えると、優劣や貧富を超越し、利己的ではなく「地球(生命体)の持続」を意識し取るべき行動ができる気がしています。
 また、一人一人自分に合った成長曲線を持っています。それを平均や標準に惑わされることなく、自分の得意や興味関心、置かれている環境に合わせて歩むことは、多様性を担保し地球という生命体の持続につながると思います。


尊い存在

 幼少期に「あなたは あなたのままで いい」という言葉を言ってもらえた時は、とても嬉しかったです。しかし、思春期になり「あなたは あなただからいい」という言葉の方が素敵だなと感じだしました。成長したい!変容したい!挑戦したい!と思っているのに、そのままでいいと言われると、期待されていない存在だと感じてしまいました。それぞれの個性で尊い使命を担っているので、自分らしく模索し生きているあなただから素晴らしいのだと思っています。
 自死を考えるということは、より生きることを努力している表れです。助けを求めることは、より良く生きる仲間の輪を広げることで、持続可能な成熟した社会に向かうことなのです。持ちつ持たれつだけでなく、誰一人取り残さない社会に近づけることだと思っています。だから、あなたの存在も私の存在も、かけがえのない尊い存在なのです。苦しい時こそ、その輪を広げ、バトン走者として構成員として共に生き合いたいと願っています。

(文:神山 忠 発達障害実践者)